
2025年9月に発売された「ANBERNIC RG 476H」は、レトロゲームに最適化された4.7インチのフルスクリーンディスプレイ(4:3/120Hz)と、ANBERNIC初の「全面ガラス」パネルを搭載した注目のAndroid携帯ゲーム機です。
このレビューでは、Unisoc T820のパフォーマンスをエミュレーターやAndroidゲームで徹底検証するとともに、前モデル(RG477Mなど)との違い、デザインや操作性、バッテリー持ちなど使い勝手も徹底的に検証しました。
【先に結論からお伝えしましょう】
ANBERNIC RG 476H の長所 (Pros):
- レトロゲームに最適な4.7インチ・4:3・120Hzの高精細ディスプレイ
- ANBERNIC初の「全面ガラス」パネルによる高級感のあるデザイン
- ドリフトしないホール効果のスティックとトリガー
- NDS/3DSの2画面表示に対応した外部出力機能
- 静音性の高いアクティブ冷却ファン
ANBERNIC RG 476H の短所 (Cons):
- PS2やGCの重いゲームを動かすには力不足なUnisoc T820の性能
- 競合に劣る古臭い標準ランチャー(ANBERNIC Launcher)
- 実用性に乏しい「Anbernic AI」機能
- クラウドゲーム(16:9)利用時の低い視認性
- L1/R1ボタンの大きなクリック音
総合評価:
ANBERNIC RG 476Hは、ハードウェアの完成度が非常に高いです。ANBERNIC初の全面ガラスパネルと4.7インチ・120Hzの4:3ディスプレイは素晴らしく、これだけで所有する価値があります。ただし、PS2やGCの性能を期待すると力不足を感じることがあること、ソフトウェア面での作り込みの甘さなどのデメリットもあります。「PSP以前のレトロゲームをフルスクリーンの高解像度の画面で遊びたい」という人にはおすすめです。
<この記事で分かること>
- デザイン: 全面ガラスの質感、プラスチック筐体、サイズ(RG477M/Vita比較)、接続ポートの位置、モニター出力(デュアルスクリーン)、付属品
- 操作性: ボタン配置、ホールスティック、ホールトリガー、キーマッピング機能、振動機能
- ディスプレイとオーディオ: 4.7インチ・4:3・120Hz LTPSディスプレイの品質、解像度(1280×960)、下部スピーカーの音質
- パフォーマンス: Unisoc T820のCPU・GPU性能、AnTuTu v10、Geekbench 6ベンチマークスコア
- エミュレーター性能: PS2『ドラゴンクエストV』、PSP『ゴッド・オブ・ウォー』(4倍解像度)、サターン『セガラリー』、3DS『ポケモンX・Y』、DS『おいでよ どうぶつの森』の実機動作とfps
- Androidゲーム性能: 『原神』『鳴潮』『崩壊:スターレイル』『フォートナイト』『Warzone Mobile』のグラフィック設定と動作感
- 冷却性能: アクティブ冷却(高速ファン+ヒートパイプ)の効果、ファンノイズ(騒音レベル)、発熱
- メモリとストレージ: 内蔵ストレージ(128GB UFS2.2)、TFカード拡張(最大2TB)、内蔵ゲーム(収録ゲーム・ゲームリスト)情報
- OSと使い方: Android 13の初期設定、RGLauncherと標準ランチャーの違い、クイック設定パネル、ファームウェア・アップデート(FOTA)、**カスタムファームウェア(cfw)**の状況
- AI機能: リアルタイム翻訳、ゲーム攻略アシスタント、画像生成機能の実用性
- バッテリーと通信: 5000mAhの持続時間(約6時間)、Wi-Fi 5、Bluetooth 5.0、ストリーミング(クラウドゲーム: Steam Link, Xbox Game Pass, Moonlight)の快適性
- メリット・デメリット: 検証してわかった良かった点と残念な点の全まとめ
- スペック: ANBERNIC RG 476Hの全仕様一覧
- 評価: 画面の見やすさ、パフォーマンス、操作性などの5段階評価と総評
- 価格と購入先: 公式サイト、AliExpress、Amazonでの価格比較(セール情報含む)
- ライバル機種比較: RG477M、RG557、AYANEO Pocket ACE、Retroid Pocket 5との性能と価格の比較
この記事を最後まで読むことで、「ANBERNIC RG 476H」を購入するべきかどうかがはっきりと分かるはず。購入に悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
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公式ページ:ANBERNIC RG 476H – anbernic
デザインと操作性:ANBERNIC RG 476Hの質感とゲームプレイ体験
ここでは、ANBERNIC RG 476Hの本体デザイン、ボタン配置や操作感、各種ポート、付属品について詳しくレビューしていきます。
高級感と持ちやすさを両立したデザイン
RG 476Hの最大の特徴は、ANBERNIC製品として初めて採用された「全面ガラス」のフロントパネルです。これにより、従来のモデルとは一線を画す、スマートフォンのよう洗練された印象を受けます。画面のベゼルが目立たなくなり、非常にスッキリとした見た目です。カラーは「ブラック」「インジゴ」「レトログレー」の3色が用意されています。
本体サイズは公式スペックで長さ17.6cm、幅8.6cm、厚さ1.6cmです。このサイズは、前モデルで金属筐体だったRG477MやPS Vita(PCH-2000)に近く、AYANEO Pocket Air(ACE)とほぼ同程度の大きさです。Nintendo Switch Liteよりは一回り小さく、Retroid Pocket Miniよりはわずかに大きいサイズ感となります。
一方で、背面や側面はプラスチック素材が使われており、ガラスの高級感と対比して、少しチープに感じるかもしれません。しかし、このおかげで本体重量は約290g(実測値では300g)と、前モデルのメタルシェルを採用したRG477M(300g台後半)と比較して軽量化されています。フラットな形状ですが、実際に手に取ると程よい重量感で、長時間のプレイでも疲れにくいバランスだと感じました。
快適な操作を実現するボタンレイアウト
操作部のレイアウトは、アナログスティックが両方とも下にある左右対称の配置です。これはANBERNIC製品ではお馴染みのスタイルで、十字キーやABXYボタンをメインに使うレトロゲームで自然な握り心地を提供します。
ABXYボタン・十字キー ABXYボタンは任天堂配置(インディゴカラーではスーファミ配色)で、適度な硬さのあるラバーの押し心地です。しっかりとした反発があり、入力は良好ですが、ボタンが少し硬く感じるため、『ストリートファイター』シリーズのような格闘ゲームでの素早い同時押しは、少し慣れが必要かもしれません。十字キーも同様にラバーの感触で、シーソー操作も可能であり、入力は良好です。
アナログスティック アナログスティックは、経年劣化によるドリフト現象を防ぐ「ホール効果ジョイスティック」を採用しています。スティックの高さは標準的ですが、倒し角度は大きめに確保されています。また、スティックの周囲には1600万色のRGBライティングが搭載されており、設定で点灯モードや色をカスタマイズできるのも遊び心があります。
ショルダーボタン L1/R1ボタンはカチカチとしたクリック感のあるタクトスイッチです。一方、L2/R2ボタンは「ホールトリガー」仕様で、アナログ入力に対応しています。これにより、『グランツーリスモ4』のようなレースゲームで、アクセルやブレーキの微妙な踏み加減を調整できます。前モデルRG477Mの横並びとは異なり、RG 476Hでは一般的なコントローラーと同じ縦並びに変更され、操作感が向上しています。
便利な機能と豊富な接続ポート
キーマッピング・振動・ジャイロ Android 13を搭載しているため、タッチ操作のみに対応する『原神』や『鳴潮』といったゲームでも、物理ボタンに操作を割り当てる「キーマッピング機能」が利用できます。さらに、振動モーターや6軸ジャイロセンサーも内蔵しており、対応するゲームではより没入感のあるプレイが可能です。
接続ポートとモニター出力 ポート類は本体下部に集中しており、左からTFカードスロット、USB Type-Cポート、3.5mmヘッドホンジャックが並びます。スピーカーも下部の左右に配置されています。上部には電源ボタン、音量ボタン、そして冷却ファンの排気口があります。このUSB Type-Cポートは充電だけでなく、1080pのDisplayPort出力にも対応しており、テレビやモニターに接続して大画面で楽しめます。
特に、NDSや3DSのゲームをプレイする際に、デュアルスクリーン(2画面)表示に対応しているのは大きな強みです。他の多くの携帯機が1画面を上下に分割して窮屈に表示するのに対し、RG 476HはType-Cでモニターに接続すると、「外部モニター」と「本体の4.7インチ画面」にそれぞれ別々の画面を映し出すことができます。例えば、テレビにメインの上画面を、手元の本体にタッチ操作用の下画面を表示させるといった、DS実機さながらの本格的な2画面プレイ体験が可能になります。これは本機を選ぶ上で非常に大きな強みです。
付属品 付属品は、Type-C充電ケーブルと説明書、ギフトボックスです。検証したモデルには液晶保護フィルムが付属していませんでしたが、これはロットによって異なる可能性があります。
まとめ:デザインと操作性
- デザイン:ANBERNIC初の全面ガラスフロントパネルを採用し、高級感と洗練された印象が向上。
- 質感:背面はプラスチック素材で、RG477Mのメタルシェルより軽量化(約290g)を実現。
- ボタン配置:スティック下部の左右対称レイアウトで、レトロゲームに適した配置。
- スティックとトリガー:ドリフトしないホール効果センサーをアナログスティックとL2/R2トリガーに採用。
- ショルダーボタン:RG477Mの横並びから縦並びに改善され、操作性が向上。
- 機能:キーマッピング機能、振動モーター、6軸ジャイロを搭載。
- モニター出力:USB-C経由のDisplayPort出力に対応し、NDS/3DSのデュアルスクリーン表示も可能。
- 付属品:Type-Cケーブルと説明書が付属。保護フィルムは付属しない場合がある。
ディスプレイとオーディオ:ANBERNIC RG 476Hの4.7インチ120Hzスクリーンとスピーカー品質
ここでは、ANBERNIC RG 476Hの最大の魅力であるディスプレイと、スピーカーの品質について詳しくレビューしていきます。
レトロゲームに最適な4.7インチ・4:3ディスプレイ
注目すべきは、このデバイスに搭載された4.7インチのLTPSディスプレイです。ANBERNICはこれを「ボーダレスフルスクリーン」とアピールしており、解像度は1280×960と、この画面サイズとしては非常に高精細(340PPI)です。
このディスプレイの真価は、その「4:3」というアスペクト比(ゴールデン比率)にあります。プレイステーションやセガサターン、N64といった古いゲーム機の多くはこの比率を採用しているため、画面いっぱいに黒帯なしで表示でき、まさにレトロゲームを遊ぶために最適化されたサイズ感です。PSPなど16:9のゲームを遊ぶ際は上下に黒帯が出てしまいますが、4:3のゲームをプレイする際の没入感は格別です。
120Hz対応の明るく美しい画面品質
画面の品質自体も非常に高いレベルにあります。最大リフレッシュレートは120Hzに対応しており、滑らかな映像表示が可能です。LTPS液晶は発色が良く鮮やかで、輝度も最大500~605nitと非常に明るいため、屋外でも鮮明な視認性を確保していました。
また、スクリーンはOCAフルラミネーション加工が施されており、コントラストがパキッとした美しい映像を楽しめます。なお、この高品質なパネルは、前モデルの『ANBERNIC RG Slide』や『ANBERNIC RG477M』と同じものが採用されているようです。
スピーカーの音質と配置
オーディオ面では、高音質のデュアルステレオスピーカーが本体下部の側面に配置されています。フロント(前面)スピーカーではないため、音が下に向かって抜けることになり、少し籠ったように聞こえるという印象も持ちました。
音質に関しては低音は弱めです。しかし、高音域はパキッとクリアに聞こえ、サウンドの分離感も良好です。中華ゲーム機の中ではかなりいい方だと思います。全体として、ゲームプレイに支障が出るようなことはなく、十分な品質は確保されています。音質にこだわりたい場合は、本体下部に搭載されている3.5mmイヤホンジャックを活用するのが良いでしょう。
まとめ:ディスプレイとオーディオ
- ディスプレイ:4.7インチ LTPS液晶 (解像度 1280×960)
- アスペクト比:レトロゲーム(PS1, N64など)に最適な4:3比率
- リフレッシュレート:最大120Hz対応で非常に滑らかな表示
- 画面品質:高輝度(最大500-605nit)で発色が良く、屋外でも鮮明
- スピーカー:高音質ステレオスピーカーを本体下部に搭載
- 音質:低音は弱いが、高音はクリアでゲームプレイには十分。下部配置のため、ややこもりがちに聞こえる場合がある
- ヘッドホンジャック:3.5mmステレオイヤホンジャックを搭載
パフォーマンスとゲーム性能::ANBERNIC RG 476HのUnisoc T820の実力とエミュレーター動作検証
ここではANBERNIC RG 476Hが搭載するUnisoc T820のパフォーマンスとゲーム性能について紹介していきます。
ベンチマーク
ANBERNIC RG 476Hに搭載されているのは、Unisoc T820プロセッサーです。これはTSMCの6nm EUVプロセスで製造されたオクタコア(8コア)チップで、CPUは高性能なCortex-A76(最大2.7GHz 1基 + 最大2.3GHz 3基)と、高効率なCortex-A55(最大2.1GHz 4基)の組み合わせで構成されています。
グラフィックス処理を担うGPUは、クアッドコア(4コア)のMali-G57を搭載し、最大850MHzで動作します。この構成は、Snapdragon 695やDimensity 810と同等かそれに近い性能帯とされています。
Antutuベンチマークの結果
ANBERNIC RG 476Hが搭載するUnisoc T820は、AntutuベンチマークでAnTuTu v10 総合で、約47万〜53万点を記録するといわれています。
AnTuTu v10 GPUのスコアは約9.3万〜11.5万点です。
Geekbench 6のベンチマーク結果
なお、Geekbench 6 シングルスコアは約887点、Geekbench 6 マルチスコアは約2,400点です。
各エミュレーターのゲーム性能:ANBERNIC RG 476HのUnisoc T820でPS2やDSはどう動く?
ANBERNIC RG 476Hが搭載するUnisoc T820が、実際のゲームでどれほどのパフォーマンスを発揮するのか。AnTuTuベンチマーク(v10)で約47万〜53万点というミドルレンジの性能が、どれほどのゲーム体験に繋がるのか、具体的なタイトルで試してみました。
PS2『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』
まずはPS2エミュレーター(AetherSX2)での動作です。親子3代にわたる壮大な物語が3Dで描かれるこの作品。ネイティブ解像度(640×448)の設定であれば、フィールドの移動や町での探索中はオリジナルの30FPSをほぼ維持し、安定して物語に没入できます。
ただし、派手な呪文が飛び交う戦闘シーンや、大きな町ではフレームレートが若干低下し、少しカクつく場面も見られました。解像度を上げると途端に重くなるため、基本的にはネイティブ解像度で遊ぶことになりますが、「設定をいじれば動く」という感覚で、テキストベースのRPGなら十分楽しめると感じました。
なお、これは比較的負荷の軽いRPGの場合です。『ゴッド・オブ・ウォー』や『グランツーリスモ4』、『ドラゴンクエスト8』といったPS2の中でも特に高負荷な3Dゲームになると、話は別です。ネイティブ解像度(1倍)であっても、パフォーマンスモードを変更したり、エミュレーター側で細かな設定を詰めたりしないと、フレームレートが低下し快適に遊ぶのは難しいと感じました。
PSP『ゴッド・オブ・ウォー 降誕の刻印』
PSPエミュレーター(PPSSPP)は、このSoCの得意分野だと断言できます。PSPの中でもトップクラスのグラフィックを誇る『ゴッド・オブ・ウォー』で試したところ、驚くことに解像度を4倍(1920×1088)に引き上げても、ほとんどのシーンでオリジナルの30FPSに張り付きます。
4.7インチの高解像度スクリーンで見る高精細なクレイトスのアクションは迫力満点。これ以上ないほど快適で滑らかなプレイ体験に感動しました。PSPのゲームを高画質で遊びたい人には最高の環境です。
ちなみに、同じく高負荷なタイトルとしてゲームキューブ(GC)のゲームも試しましたが、こちらはPS2と同様の傾向でした。『F-Zero GX』のような特に重いタイトルは、パフォーマンスモードを変更し、エミュレーターの設定を調整することで2倍解像度(1280×960)でも動作しますが、場面によっては不安定さも残るため、完璧な動作を期待するには力不足と感じました。
サターン『セガラリーチャンピオンシップ』
一方で、最も苦戦したのがセガサターンです。アーケードの興奮が蘇る『セガラリー』ですが、これはSoCの性能というよりも、エミュレーター(Yaba Sanshiroなど)とUnisoc T820との相性問題が大きく影響しているようです。
ネイティブ解像度(320×224)で実行しても、コースが複雑になったり、ライバル車が増えたりする場面で顕著な処理落ちが発生。安定して30FPSを維持することが難しく、快適なレース体験とはいきませんでした。これは今後のエミュレーター側のアップデートに期待したいところです。
3DS『ポケットモンスター X・Y』
ニンテンドー3DSエミュレーター(Citra)での動作も確認しました。シリーズ初のフル3Dとなった『ポケモンX・Y』では、ネイティブ解像度(400×240)で立体視をオフに設定すれば、フィールドの移動中は30FPSで安定して動作します。
しかし、3Dモデルのポケモンが派手な技を繰り出す戦闘シーンになると、処理が重くなりフレームレートが20FPS台に落ち込むことがありました。ややカクつきは感じますが、ゲームの進行自体は可能です。Type-C出力によるデュアルスクリーン表示に対応している点が、大きな強みです。
DS『おいでよ どうぶつの森』
ニンテンドーDS(DraSticなど)の動作は、まさに完璧です。どうぶつたちとのスローライフを楽しむ『おいでよ どうぶつの森』は、常にオリジナルの60FPSで非常に滑らかに動作します。4.7インチのタッチスクリーン操作も快適で、実機と全く変わらない感覚でプレイに没頭できました。もちろん、これも外部ディスプレイへのデュアルスクリーン表示に対応しています。
まとめ:ゲーム性能
Unisoc T820の性能は、PSPやDSといった世代のゲームを「高画質で快適に遊びたい」というニーズに完璧に応えてくれます。PS2や3DSといった、より重い世代も「タイトルを選び、設定を調整する」ことを楽しめるなら、十分実用範囲内です。ただし、セガサターンのように、SoCの性能だけではどうにもならないエミュレーターとの相性問題も存在するため、すべてのレトロゲームが完璧に動くわけではない、という点は理解しておく必要があります。
Androidゲームの動作感:ANBERNIC RG 476HのUnisoc T820で原神やフォートナイトは快適に動く?
エミュレーターだけでなく、Androidネイティブのゲームがどれだけ動くのかも試してみました。
原神
まず、非常に高いグラフィック性能を要求する『原神』です。グラフィック設定を「低」で試したところ、フィールド探索中は30FPSで比較的安定しており、テイワット大陸の美しい景色を楽しめます。しかし、複数の敵との戦闘で元素爆発が飛び交うと、カクつきが出て20FPS台まで落ち込むことがありました。「中」設定以上で60FPSを維持するのは難しく、快適さを求めるなら画質は「最低」まで割り切る必要がありそうです。
鳴潮 (Wuthering Waves)
『原神』と同様のオープンワールドですが、こちらは最適化がまだ進んでいない印象です。グラフィック設定を「低」にしても、戦闘中や高速でフィールドを駆け抜ける場面では30FPSを維持するのが難しく、フレームレートが不安定になりがちでした。これはデバイスの性能というより、ゲーム側の今後の最適化に期待したいところです。
崩壊:スターレイル (Honkai: Star Rail)
こちらはターン制バトルが主体なので、フレームレートの変動がプレイに与える影響は少ないのが救いです。グラフィック設定「中」、フレームレート30FPSの設定で、ほとんどの場面で安定して動作し、快適に宇宙の旅を楽しめました。画質を「低」まで落とせば60FPS設定も狙えますが、必殺技の派手な演出ではカクつきが見られたため、画質と安定性のバランスが良い「中」設定の30FPSがおすすめです。
フォートナイト
人気のバトルロイヤルゲーム『フォートナイト』も試しました。パフォーマンスを最優先し、グラフィック設定を「低」にしたところ、ゲーム序盤は平均して40~50FPSで動作しました。しかし、多くのプレイヤーが集まる終盤の建築バトルになると、処理が追いつかず30FPSを下回ることも。カジュアルに楽しむ分には問題ありませんが、「ビクロイ」を目指す競技性の高いプレイには、やや力不足を感じました。
Call of Duty: Warzone Mobile
最大120人が戦う大規模バトルロイヤルということで、モバイル版とはいえ非常に高い負荷がかかります。グラフィック設定を「中」や「低」にしても、30FPSを安定して維持するのは難しい印象です。特に多くの敵との銃撃戦や、マップを見渡す場面ではフレームレートが不安定になりがちで、快適なプレイとは言い難い状況でした。
まとめ:Androidゲームの動作感
Unisoc T820の性能は、最新の高負荷なAndroidゲームを最高設定で快適に遊ぶには、やはり力不足です。しかし、ほとんどのタイトルはグラフィック設定を「中」から「低」に調整する「割り切り」さえできれば、十分にプレイ可能なレベルで動作してくれます。『崩壊:スターレイル』のようなターン制のゲームは安定しやすいですが、『原神』や『Warzone Mobile』のような描画負荷が激しく変動するゲームでは、画質を犠牲にして安定性を取る設定が必須になると感じました。
発熱と冷却性能:ANBERNIC RG 476Hのアクティブ冷却の実力
ここでは、Unisoc T820の性能を安定して引き出すために重要な、RG 476Hの冷却システムと実際の使用感についてレビューしていきます。
ヒートパイプ搭載のアクティブ冷却
ANBERNIC RG 476Hは、Unisoc T820のパフォーマンスを安定して維持するため、「高速ファン+ヒートパイプによるアクティブ冷却」システムを搭載しています。これは、高負荷なゲームを長時間プレイした際に発生する熱を効率的に排出し、熱による性能低下(サーマルスロットリング)を防ぐためのものです。
構造としては、本体背面にファンの吸気口があり、吸い込んだ空気が内部のヒートパイプを冷やし、温まった空気が本体上部の排気口から排出される仕組みです。
静音性に優れたファンと実際の冷却性能
携帯ゲーム機でファンが搭載されると、その「ファンノイズ」が気になるところですが、RG 476Hのファンは非常に静かです。デフォルトの「AUTO」設定でPS2などのゲームをプレイしていても、ファンの音はほとんど気にならないレベルでした。ある実測データによれば、デバイスから50cm離れた位置での騒音レベルは最大でも38dBと、冷却能力に優れた静音タイプのファンが採用されています。
実際の冷却性能も高く、高負荷なゲームをプレイしていても、手元が不快になるほど熱くなることはありませんでした。空冷システムがしっかりと機能し、チップセットの熱を効率的に処理していることが実感できます。
動作モードを選べるファン設定
このデバイスの優れた点として、ファンの動作モードをユーザーが自由に設定できる点が挙げられます。画面上部からスワイプして表示されるクイック設定パネルから、ファンの設定を変更可能です。
設定は、負荷に応じて自動で回転数を調整する「オート」のほか、ファンを「完全に停止」させて無音で動作させるモード、あるいは冷却性能を最大化する「強く」といったモードを自分で選択できます。軽いレトロゲームを遊ぶ時は「停止」にして静音性を優先し、PS2や『原神』のような高負荷なゲームを遊ぶ時は「オート」や「強」にするといった、排熱とノイズのバランスを自分で選べるのは非常に便利だと感じました。
まとめ:発熱と冷却性能
- 冷却システム:高速ファンとヒートパイプによるアクティブ冷却機構を搭載。
- 冷却性能:高負荷時もサーマルスロットリングを防ぎ、手元に伝わる熱も特段気にならない。
- ファンノイズ:デフォルトのオート設定では非常に静かで、最大騒音レベルも約38dB(50cm離れた位置)と気にならないレベル。
- 設定機能:ファンの動作を「オート」「停止」「強」など手動で調整でき、静音性と冷却性能のバランスを自由に選択可能。
メモリとストレージ:ANBERNIC RG 476HのUFS2.2とゲーム入りSDカード
ここでは、ANBERNIC RG 476Hのメモリ(RAM)とストレージ(ROM)の仕様、およびTFカードの拡張性についてレビューしていきます。
高速なUFS2.2ストレージと8GBメモリ
本機の動作を支えるメモリは8GB LPDDR4Xを搭載しています。Android 13の動作や、複数のエミュレーターを切り替えて使用する際にも十分な容量です。
内蔵ストレージは128GBで、注目すべきは転送速度の速いUFS2.2規格を採用している点です。これにより、OSの起動やアプリの読み込みが高速で、全体的な動作がキビキビとしている印象を受けます。
TFカード拡張と「内蔵ゲーム」モデルについて
ANBERNIC日本公式サイトで購入する場合、「ゲームSDカードが含まれていません」と明記されています。その代わり、本体下部にはTFカード(microSD)スロットが搭載されており、最大2TBまでのカードに対応しています。これにより、自分で吸い出したゲームイメージを大量に保存し、自分だけのライブラリを構築できる高い拡張性を持っています。
AliExpress販売情報
一方で、AliExpressなどの海外ストアでは、「128G(4K Games)」や「256G(8K Games)」といった、ゲームがプリインストールされたSDカードが付属するモデルも販売されています。「どんなゲームが入っているのか」「収録ゲームのリストは?」と気になる方も多いと思いますが、これらのゲームのプレイは推奨されません。
参考までに、私自身がAliExpressでANBERNIC製のゲーム機を何台か購入した経験では、機種ごとに収録されているゲームリストに大きな違いは感じられませんでした(128Gモデルと256Gモデルのゲーム数の違いはかなり大きいです)。中身が気になる場合は、海外のYouTube動画などを参考にすると良いでしょう。過去の機種でも、新機種とそれほど内蔵ゲームが変わっていないので、とても参考になります。
まとめ:メモリとストレージ
- メモリ(RAM):8GB LPDDR4Xを搭載。
- 内蔵ストレージ:128GB UFS2.2を採用し、OSやアプリの起動が高速。
- TFカード拡張:最大2TBまでのmicroSDカードに対応。
- 公式モデル:ANBERNIC公式サイトではゲームSDカードは付属しない。
- 海外ストアモデル:AliExpressなどではゲーム入りSDカード付属モデルも存在するが、プレイは非推奨。
OSと使い方:ANBERNIC RG 476Hの初期設定とランチャー
ここでは、ANBERNIC RG 476HのOSと、ゲームを遊ぶための基本的な使い方や設定について解説していきます。
Android 13と初期設定の「壁」
RG 476HにはAndroid 13が搭載されており、Google Playストアにも対応しています。PSPなどの携帯ゲーム機と違い、本質的には「コントローラーが付いたAndroidスマートフォン」に近いため、使い方が分からず戸惑う人も多いようです。
初めて電源を入れると、初期セットアップが始まり、エミュレーターアプリなどが自動でインストールされます。しかし、その後は基本的に自力で設定が必要です。アプリごとにストレージへのアクセス許可(パーミッション)を与えたり、エミュレーターにゲームROMが保存されているフォルダ(ディレクトリ)を教えたりといった作業が発生します。この「Androidならでは」の手順が、最初のハードルかもしれません。
2種類のランチャー(ホーム画面)
本機には2種類のホーム画面(ランチャー)が用意されています。
標準ランチャー (Quickstep) ピュアAndroidに近いシンプルなホーム画面です。アプリをインストールすると、ホーム画面の右側へどんどん追加されていく形式です。使い慣れたスマホのように操作できますが、ゲームを探すのには少し不便かもしれません。
RGLauncher(独自ランチャー) ANBERNIC独自のゲーム機風ランチャーです。本体左下にあるファンクションキー(ゲームモードボタン)を長押しするか、後述のクイック設定パネルから起動できます。こちらを使えば、ゲーム機のように一覧からゲームを選んで直接起動でき、非常に便利です。
もし標準ランチャーが使いにくいと感じたら、Playストアから「Daijisho」など、より高機能なフロントエンドアプリを導入して、メインのランチャーとして設定するのもおすすめです。
重要な「クイック設定パネル」
RG 476Hを使いこなす上で最も重要なのが、画面上部から下にスワイプして出す「クイック設定パネル」です。
ここには、ゲーム機としての機能が集約されています。タッチ操作しかできないAndroidゲームを物理ボタンで遊ぶための「Keymapping(キーマッピング)」や、性能を引き出す「パフォーマンスモードの切り替え」、静音性や冷却を調整する「冷却ファンの設定」、アナログスティックの「ライトの設定」など、重要な設定がここから行えます。
ファームウェア・アップデートとカスタムファームウェア(cfw)
システムはFOTA(Firmware Over-The-Air)ワイヤレスアップグレードに対応しています。Wi-Fiに接続しておけば、システムのバグ修正や機能改善が自動で通知され、簡単にアップデートできるため安心です。
また、ANBERNICの公式サイトでは他の機種向けに手動アップデート用のファームウェアが提供されていますが、今回確認した時点ではRG 476H用のものはまだリストにありませんでした。ANBERNIC製品はコミュニティによるカスタムファームウェア(cfw)の開発が活発なことも魅力の一つですが、こちらもレビュー時点ではRG 476Hに対応したものはまだ登場していないようです。
まとめ:OSと使い方
- OS:Android 13を搭載し、Google Playストアにも対応。
- 初期設定:初回起動時にアプリが自動インストールされますが、エミュレーターのフォルダ設定や権限許可は手動で行う必要あり。
- ランチャー:スマホライクな標準ランチャーと、ゲーム機風の「RGLauncher」の2種類を搭載。
- 独自機能:クイック設定パネルから、キーマッピング、ファン制御、パフォーマンスモードの切り替えが可能。
- アップデート:Wi-Fi経由でのFOTAワイヤレスアップグレードに対応。
- cfw:レビュー時点では、RG 476Hに対応した公式の手動ファームウェアやカスタムファームウェアはまだ提供されていない。
AI機能:ANBERNIC RG 476Hの新搭載「Anbernic AI」
ここでは、ANBERNIC RG 476Hに搭載された「Anbernic AI」機能について、その内容と実用性をレビューしていきます。
Anbernic AIの主な機能
RG 476Hには、ゲーム体験をサポートするためのAI機能群が「Anbernic AI」として搭載されています。これには、リアルタイム翻訳やゲーム攻略アシスタント、画像生成などが含まれます。
AIリアルタイム翻訳 最も注目される機能が「AIリアルタイム翻訳」です。インターネット接続中にR3キー(右スティック押し込み)を押すことで、ゲーム画面内のテキストを翻訳できます。例えば、海外版の『PlayStation 2』ゲームのメニューやダイアログを日本語に翻訳するといった使い方が可能です。この機能は非常に便利だと感じる反面、翻訳精度は完璧ではなく、時折不正確な結果が表示されることもあります。
AIゲーム攻略アシスタント ゲームプレイ中に行き詰まった際、Anbernic AIにゲームの攻略法を相談できる機能です。ワンクリックで攻略ガイドを取得できるとされており、レトロゲームで次に何をすべきか分からなくなった時には役立つかもしれません。
画像生成AI テキストから画像生成 入力したテキストに基づいて画像を生成する、いわゆる「画像生成AI」機能です。
画像処理 古い写真や低解像度の写真をAIで補正する機能も含まれています。公式HPのUIイメージでは「Fix Old Photo(古い写真を修正)」「Fix High Photo(高解像度化?)」といった項目が確認できます。
問題解決サポート / インテリジェント対話 AIに対して会話形式で質問し、回答を得ることができるチャットAI機能です。
AI機能の実用性と評価
正直なところ、これらのAI機能は「面白い試み」ではあるものの、実用性には疑問が残ります。特に画像生成機能は、ゲーム機というデバイスの用途と噛み合っておらず、多くの人が「あまり使わない」と感じる機能でしょう。
翻訳機能は便利ですが、精度が不安定なため過度な期待はできません。全体として、これらの機能は「誰も求めていない」流行りのAIを付け足しただけ、という印象が否めません。この開発リソースを、長年の課題である標準ランチャー(ANBERNIC Launcher)の改善に充ててほしかった、というのが率直な感想です。
まとめ:AI機能
- 搭載機能:リアルタイム翻訳、ゲーム攻略アシスタント、画像生成などを「Anbernic AI」として搭載。
- リアルタイム翻訳:R3キーで起動しゲーム内テキストを翻訳可能だが、精度は不安定。
- 攻略アシスタント:ゲームのヒントやガイドをAIに相談できる。
- 実用性:翻訳以外はゲーム機としての実用性が低く、全体的に「おまけ」や「ギミック」の域を出ない。
- 評価:AI機能の開発よりも、標準ランチャーの改善を優先すべきだったと感じる。
バッテリーと通信性能:ANBERNIC RG 476Hの持続力とストリーミング適性
ここでは、ANBERNIC RG 476Hのバッテリー性能と、Wi-Fiを使ったストリーミングやクラウドゲームの快適性についてレビューしていきます。
5000mAhバッテリーの持続時間
RG 476Hは、このサイズの携帯ゲーム機としては大容量な5000mAhのポリマーリチウムバッテリーを搭載しています。この大容量バッテリーは、本体重量が約290g~300gとなる要因の一つですが、その分、長時間のゲームプレイを支えます。
公式スペックでは、連続使用時間(バッテリー持続稼働)は約6時間とされています。PS2や『原神』のような高負荷なゲームをアクティブ冷却ファンを回しながらプレイすると、これより短くなることが予想されますが、レトロゲーム中心であれば十分な持続力です。充電は5V/2Aに対応しており、フル充電までの時間は約3時間です。
クラウドゲームとストリーミング性能
通信機能として、2.4G/5GのWIFI (802.11a/b/g/n/ac、いわゆるWi-Fi 5)とBluetooth 5.0を搭載しています。5G Wi-Fiに対応しているため、AAAタイトルのストリーミングやオンラインマルチプレイヤーも快適に動作するよう設計されています。
実際に「Steam Link」や「Xbox Game Pass」を利用したリモートプレイやクラウドゲームも楽しむことができます。NVIDIAのPCからストリーミングする「Moonlight」なども同様に利用可能です。しかし、ここで注意点があります。これらのPCや据え置き機向けのゲームは、多くが16:9の大画面を前提にUI(文字情報)がデザインされています。
RG 476Hの4.7インチ(アスペクト比4:3)ディスプレイでこれらをプレイすると、文字が非常に小さく潰れてしまい、視認性が悪くなるというトレードオフが発生します。クラウドゲームも「可能」ではありますが、快適なプレイには割り切りが必要だと感じました。
まとめ:バッテリーと通信性能
- バッテリー容量:5000mAhの大容量バッテリーを搭載。
- 連続使用時間:約6時間の連続駆動が可能。
- 充電時間:5V/2A充電に対応し、約3時間でフル充電。
- Wi-Fi:2.4/5G Wi-Fi (802.11a/b/g/n/ac)に対応。
- Bluetooth:Bluetooth 5.0を搭載。
- クラウドゲーム:Steam LinkやXbox Game Passに対応。
- ストリーミングの課題:4.7インチの4:3画面では、PCゲームなどの文字が小さくなり視認性が低下する。
検証してわかったANBERNIC RG 476Hのメリット・デメリット
ANBERNIC RG 476Hを実際に使用して感じた、優れている点(メリット)と、購入前に知っておくべき点(デメリット)を、他のゲーム機との比較も交えながら詳しく解説します。
メリット
メリット1:レトロゲームに最適な4.7インチ・4:3・120Hzディスプレイ
本機の最大の強みは、このディスプレイにあります。4.7インチという携帯機としては大きな画面サイズでありながら、アスペクト比が4:3のため、古いゲーム機(ファミコン、スーパーファミコン、プレイステーションなど)の映像を画面いっぱいに表示できます。解像度は1280×960と高精細で、LTPS液晶の発色も非常に鮮やかです。さらに最大120Hzのリフレッシュレートに対応しており、非常に滑らかな映像を楽しめます。
メリット2:ANBERNIC初の「全面ガラス」による高級感
ANBERNIC製品として初めてフロントパネルに「全面ガラス」を採用しました。これにより、従来のモデルにあったベゼル(枠)の段差がなくなり、スマートフォンやAYANEO Pocket Airのような洗練されたスッキリとした外観を実現しています。特にインディゴやレトログレーといったカラーは、懐かしさと新しさが同居した所有欲を満たすデザインだと感じました。
メリット3:ドリフトしない「ホールセンサー」のスティックとトリガー
アナログスティックとL2/R2トリガーの両方に、物理的な接触がない「ホール効果センサー」を採用している点は大きなメリットです。Nintendo Switchなどで問題になるスティックのドリフト現象(触れていないのに勝手に入力される不具合)が発生しにくく、長期間安心して使用できます。また、L2/R2トリガーはアナログ入力に対応しており、レースゲームでの微妙なアクセルワークも可能です。
メリット4:前モデル(RG477M)から改善されたショルダーボタン配置
前モデルのRG477MではL1/L2、R1/R2ボタンが横並びでしたが、RG 476Hでは一般的なコントローラーと同じ縦並びに改善されました。これにより、L2/R2トリガーが格段に押しやすくなり、PS2やPSPのゲームをプレイする際の操作性が向上しています。
メリット5:NDS/3DSの2画面表示に対応した外部出力
USB Type-Cポートから1080pでのDisplayPort出力が可能です。注目すべきは、ニンテンドーDSや3DSのゲームをプレイする際に、外部モニターと本体スクリーンを使った「デュアルスクリーン表示」に対応している点です。これにより、携帯機でありながら、テレビやモニターを活用した本格的な2画面プレイ体験が可能になります。
メリット6:静音かつ強力なアクティブ冷却ファン
Unisoc T820の性能を維持するため、ヒートパイプと高速ファンによるアクティブ冷却システムを搭載しています。このファンは非常に静かで、PS2などの高負荷なゲームをプレイしていても騒音はほとんど気になりません。ファンの動作モードも手動で調整でき、冷却性能と静音性のバランスが良いと感じました。
メリット7:PSPやDSの完璧な動作と、PS2も「動かせる」性能
Unisoc T820の性能により、PSPやニンテンドーDSのゲームは非常に快適に動作します。特にPSPは、4倍解像度などにアップスケールしても滑らかに動作し、高精細なグラフィックで楽しめます。また、PS2に関しても、設定を調整すれば『ドラゴンクエストV』などのRPGや、一部のアクションゲームをプレイ可能なレベルで動かすことができます。
デメリット
デメリット1:全面ガラスと対照的なプラスチック背面の質感
フロントパネルの高級感が素晴らしい反面、背面や側面のプラスチック素材が素地っぽく、対比でチープに感じてしまうのは残念な点です。AYANEO製品などに見られるマット塗装などが施されていれば、全体の満足度がさらに上がったと感じます。
デメリット2:期待値には届かないPS2・GCのパフォーマンス
SoCにUnisoc T820を採用したことで、性能はRetroid Pocket 4(Dimensity 900)よりやや優れる程度に留まり、Retroid Pocket 5やAYN Odin 2といった上位機種には及びません。PS2やゲームキューブは「動く」ものの、『ゴッド・オブ・ウォー』のような重いタイトルは1倍解像度でも調整が必要で、快適にプレイできるのは一部の軽いゲームに限られます。
デメリット3:競合(Retroid, AYANEO)に劣る標準ランチャー
ANBERNIC Launcher(RGLauncher)という独自ランチャーが搭載されていますが、そのUIや使い勝手は数年前から大きく変わっておらず、古臭さを感じます。GoRetroidやAYANEOが洗練された専用フロントエンドを提供しているのと比較すると、ユーザー体験の面で大きく見劣りしてしまいます。
デメリット4:実用性に乏しい「Anbernic AI」機能
目玉機能として搭載された「Anbernic AI」ですが、リアルタイム翻訳は精度が不安定で、画像生成や攻略アシスタントといった機能は「誰も求めていない」ギミックだと感じました。この開発リソースを、前述のランチャー改善に充てるべきだったのではないでしょうか。
デメリット5:L1/R1ボタンの大きなクリック音
1/R1のショルダーボタンはタクトスイッチが採用されており、押すたびに「カチカチ」という大きめのクリック音が発生します。操作感は良好ですが、静かな部屋でプレイしているとこの音がかなり響くため、気になる人は多いかもしれません。
デメリット6:クラウドゲーム時に文字が小さくなる4:3画面
4:3の画面はレトロゲームには最適ですが、Xbox Game PassやSteam Linkなどのクラウドゲームをプレイする際には弱点となります。これらのサービスは16:9の画面を前提にUIが作られているため、4:3画面ではUIや文字が非常に小さく表示され、視認性が著しく低下します。
デメリット7:下部配置で音がこもりがちなスピーカー
スピーカーは本体下部の左右に配置されています。ステレオではあるものの、音が下に向かって出るため、フロントスピーカーと比べると少しこもったように聞こえます。音質も低音が弱く、平均的なレベルに留まっています。
まとめ:メリット・デメリット
ANBERNIC RG 476Hは、レトロゲームに最適化された4.7インチの高品質な4:3ディスプレイと、ANBERNIC初となる全面ガラスの高級感を併せ持ったデバイスです。特にPSPやDSは完璧に動作し、PS2も「設定次第で遊べる」性能を持っています。
一方で、Unisoc T820の性能は競合の上位機種には及ばず、PS2やGCの重いゲームを快適に遊ぶには力不足です。また、AI機能や標準ランチャーといったソフトウェア面での作り込みの甘さが、ハードウェアの質の高さと比べて目立ってしまう、惜しい一台だと感じました。
ANBERNIC RG 476Hのスペック(仕様)
- ディスプレイ: 4.7インチ LTPS インセルディスプレイ (解像度 1280×960、120Hz対応)
- CPU: Unisoc T820 (6nm オクタコア: 1A76@2.7GHz + 3A76@2.3GHz + 4A55@2.1GHz)
- GPU: クアッドコア Mali-G57 (850MHz)
- RAM: 8GB LPDDR4X
- ROM: 128G UFS2.2
- 外部ストレージ: TFカード拡張対応 (最大2TBまで)
- バッテリー: 5000mAh ポリマーリチウムバッテリー (連続使用時間約6時間)
- 充電: 5V/2A 充電対応 (フル充電まで約3時間)
- ワイヤレス通信: 2.4/5G WIFI 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 5.0
- ストリーミング: 対応 (ストリーミング、ワイヤレス画面投影)
- インターフェース: USB Type-C (DisplayPort出力対応)、3.5mmステレオイヤホンジャック、TFカードスロット、マイク
- センサー: 六軸ジャイロセンサー
- 映像出力: USB Type-Cによる1080p DisplayPort出力 (NDS・3DSデュアルスクリーン表示対応)
- スピーカー: 高音質ステレオスピーカー
- 操作: 大角度3Dホールジョイスティック、ホールトリガー
- 振動効果: 振動モーター
- 機能: RGBライティング、AI機能、FOTAワイヤレスアップグレード、オンラインマルチプレイヤー
- エミュレーター(シュミレーター): Androidゲームと他の30+種類のゲームプラットフォーム対応
- 冷却: 高速ファン+ヒートパイプによるアクティブ冷却
- 筐体: ガラスフロントパネル、プラスチックバックシェル
- OS: Android 13
- サイズ: 長さ17.6cm 幅 8.6cm 身長 1.6cm
- 重量: 0.290kg (290g)
- カラー: ブラック、インジゴ、レトログレー
- 付属品: 説明書、Type-C充電ケーブル、ギフト ボックス
ANBERNIC RG 476Hの評価
7つの評価基準で「ANBERNIC RG 476H」を5段階で評価してみました。
【項目別評価】
画面の見やすさ:★★★★★ (星5)
4.7インチ・4:3・120Hz・高解像度という、レトロゲーム(特にPS1やサターン)を表示するために生まれてきたような完璧なディスプレイです。発色も輝度も申し分ありません。
パフォーマンス:★★★☆☆ (星3)
Unisoc T820を搭載し、PSPやDSはアップスケーリングしても完璧に動作します。しかし、PS2やゲームキューブは「設定をいじればなんとか動く」レベルで、重いタイトルは快適とは言えません。
操作性: ★★★★☆ (星4)
ドリフトしないホール効果のスティックとトリガーは素晴らしいです。十字キーの感触も良好で、RG477Mから改善されたショルダーボタン(縦並び)も高評価です。
機能性:★★★★☆ (星4)
アクティブ冷却ファン、振動、6軸ジャイロ、キーマッピング、NDS/3DSの2画面対応外部出力など、ハードウェア機能は満載です。
デザイン:★★★★☆ (星4)
ANBERNIC初の「全面ガラス」フロントパネルは非常に高級感があり、洗練されています。一方、背面のプラスチック感がフロントの高級感と対照的で、少しチープに感じます。
使いやすさ:★★☆☆☆ (星2)
Android 13搭載ですが、初期設定のハードルがあります。何より標準の「ANBERNIC Launcher」が古臭く、競合他社と比べてユーザー体験が大きく劣っています。
価格:★★★★☆ (星4)
約2.5万円という価格は、この高品質なディスプレイとホールセンサー、アクティブ冷却を搭載していることを考えれば、妥当もしくはコストパフォーマンスが高いと言えます。
【総評:★★★★☆ (星4)】
ハードウェアの完成度と魅力
ANBERNIC RG 476Hは、ハードウェアの品質と価格のバランスが取れた、非常に魅力的な携帯ゲーム機です。最大の強みは、ANBERNIC製品として初めて採用された「全面ガラス」のフロントパネルによる高級感と、レトロゲーム(PS1、N64、サターンなど)に最適化された4.7インチ・4:3の高精細なフルスクリーンディスプレイにあります。
約2.5万円という価格ながら、後述する高品質なディスプレイ、ホールセンサー、アクティブ冷却システムを搭載しており、コストパフォーマンスは高いと言えます。
強みは最高の4:3ディスプレイと操作性
このデバイスの満足度を支えているのは、間違いなく4.7インチのLTPSディスプレイです。1280×960という解像度はレトロゲームのアスペクト比に完璧にマッチし、120Hzの高リフレッシュレートで滑らかな映像を楽しめます。また、操作面では、経年劣化によるドリフト(不具合)の心配がないホール効果のジョイスティックとトリガーを採用している点が大きな強みです。
Unisoc T820チップの性能により、PSPやニンテンドーDSのゲームは非常に快適です。特にPSPは解像度を4倍に引き上げても滑らかに動作し、DSは常に60FPSで完璧な動作を見せます。さらに、NDS/3DSのデュアルスクリーン表示に対応した1080pの外部出力機能や、静音性に優れたアクティブ冷却ファンも搭載しており、ハードウェアの機能は非常に充実しています。
購入前の注意点:性能の限界とソフトウェア
一方で、購入前に理解しておくべき「割り切り」も存在します。まず、Unisoc T820はミドルレンジのSoCであり、PS2やゲームキューブの完璧な動作は期待できません。『ゴッド・オブ・ウォー』のような重いPS2ゲームは1倍解像度でも処理落ちし、セガサターンもエミュレーターとの相性問題で動作が不安定になる場合があります。
また、ハードウェアの進化にソフトウェアが追いついていない点も残念です。競合他社(GoRetroidやAYANEO)が洗練されたランチャーを提供する中、ANBERNICの標準ランチャーは古臭く、使い勝手が良いとは言えません。目玉機能である「Anbernic AI」も、実用性に乏しいと感じました。
まとめ:どんな人に最適か
ANBERNIC RG 476Hは、「PS2やGCの完璧な動作は求めない。その代わり、PSP、DS、PS1以前のレトロゲームを、高解像度なフルスクリーンディスプレイで遊びたい」という人に最適なデバイスです。ハードウェアの質感と美しいディスプレイは、これまでのANBERNIC製品の中でも際立っており、レトロゲームを好むユーザーにとっては、非常に満足度の高いおすすめの一台となるでしょう。
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ANBERNIC RG 476Hの価格・購入先
※価格は2025/11/14に調査したものです。価格は変動します。
ANBERNIC日本公式サイト
ANBERNIC RG 476H
24,022円(セール価格・通常価格は25,499円・ゲームROMなし)
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- Amazonで26,888円(税込)、
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他のおすすめのライバル機種と価格を比較
「ANBERNIC RG 476H」に似た性能をもつ携帯ゲーム機も販売されています。価格の比較もできるので、ぜひ参考にしてみてください。
ANBERNIC RG 477M
ANBERNICから発売された4.7インチのAndroid携帯ゲーム機です(2025年8月 発売)。Android 14、Dimensity 8300、12GB LPDDR5、解像度1280×960 pxのLTPSインセルディスプレイ、5300mAhバッテリーを搭載しています。
また、AI機能(リアルタイム翻訳、ワンクリックゲームガイドなど)、30種類以上のエミュレーター、Androidゲーム、2つの3Dホールジョイスティック、高忠実度デュアルスピーカー、1080pのディスプレイポート映像出力、RGBライト、キーマッピング機能「Keymapp」、アクティブ冷却システム、27W急速充電に対応。
最大2TBまでのTFカード拡張、RGBライト、ゲームの追加、セーブ機能、Type-Cポート、振動モーター、ストリーミングプレイ、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3にも対応しています。
価格は、Amazonで44,888円(税込・12GB+256GB)、AliExpressで39,828円(ROMなし)、米国 Amazon.comで$299.99、です。
関連記事:ANBERNIC RG 477M 徹底レビュー!PS2も余裕で動く性能を評価
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ANBERNIC RG557
ANBERNICから発売された5.48インチのAndroid携帯ゲーム機です(2025年4月26日 発売)。
Android 14、MediaTek Dimensity 8300プロセッサー、12GB LPDDR5X RAM、解像度1920*1080のAMOLED液晶、5500mAhバッテリー、TFカードスロット(最大2TB)を搭載しています。
また、DisplayPort映像出力、高解像度静電容量式ジョイスティック(RGBライティング付)、27W急速充電、アクティブ冷却(高速ファン+ヒートパイプ採用)、ホールトリガー、6軸ジャイロ、振動モーター、
ストリーミング(Moonlightなど)、ワイヤレス画面投影、デュアルスピーカー、USB Type-C (OTG)、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3に対応しています。
価格は、Amazonで40,999円(税込)、AliExpressで36,751円(ROMなし)、米国 Amazon.comで$289.99、です。
関連記事:ANBERNIC RG557徹底レビュー!PS2/GCエミュ性能とRG556比較
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AYANEO Pocket ACE
AYANEOから発売される4.5インチのポータブルゲーミングPCです(2025年6月下旬に発売)。
Android 13 OS、Qualcomm Snapdragon G3x Gen 2 Gaming Platform、LPDDR5X 8533Mbpsメモリ(8GB/12GB/16GB)、4.5インチIPSディスプレイ(解像度1620×1080・3:2)、UFS 4.0ストレージ(128GB版のみUFS 3.1、128GB/256GB/512GB/1TB)、
6000mAhバッテリー、microSDカードスロット(最大100MB/s)、スピーカー(本体下部からダイレクトに出力)、Surge Linear Motor(CSA 0916B)振動モーター、6軸ジャイロスコープ、ホームボタン(エミュレータショートカット機能、Xboxストリーミングメニュー呼び出し)、を搭載しています。
また、デバイス偽装機能、冷却システム、、キーマッピング機能、カスタムパフォーマンスモード、、中型ホールセンサージョイスティック(ドリフトなし、デッドゾーンなし)、リニアホールトリガー、SoundTAPMagicサウンドバイブレーション機能、ストリーミングモード(低遅延化・Xboxストリーミング時のメニュー呼び出しボタン搭載)、DP 1.4映像出力(Type-Cポート経由)、40W PD急速充電に対応。
マスターコントローラー、Turboキー(パフォーマンスモード切替)、カスタマイズ可能なボタン(SE/ST、Home/Turbo、LC/RCキー)、AYASpaceシステム、AYAHomeランチャー、フル機能 USB 3.2 Gen 2 Type-C (10Gbps) x1、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.3にも対応しています。
価格は、Amazonで84,800円(Snapdragon G3X Gen2 12GB/256GB・※16GB/1TB レトロパワーモデルは99,800円)、楽天市場で84,800円(税込・送料無料)、ヤフーショッピングで84,800円、AliExpressで80,265円、米国 Amazon.comで$549.99、です。
関連記事:AYANEO Pocket ACE徹底レビュー!機能・評価・PocketS比較
Amazonで「AYANEO Pocket ACE」をチェックする
Retroid Pocket 5
Retroid Pocketから発売された5.5インチの携帯ゲーム機です(2024年9月10日 発売)。
Android 13、Qualcomm Snapdragon 865、8GB LPDDR4x メモリ、フルHDのOLED(有機EL)液晶、128GB UFS 3.1ストレージ、5000 mAhバッテリー、TFカードスロット、3.5mmイヤホンジャックを搭載しています。
また、27W急速充電、DP映像出力、3Dホールスティック、アナログジョイスティックR2/L2、ストレージの拡張、USB Type-C (OTG)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1に対応しています。
価格は、Amazonで71,920円(税込)、AliExpressで28,479円、米国 Amazon.comで$258.00です。
関連記事:「Retroid Pocket 5」とPocket 4 /4Proの違いを解説
Amazonで「Retroid Pocket 5」をチェックする
他のANBERNIC携帯ゲーム機と比較
他人もANBERNIC携帯ゲーム機が販売されています。2025、2024年モデルもあるので、ぜひ比較してみてください。
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