書評 ITビジネスの原理

この本から学んだことは、「ITとはいかに利益を出すものなのか」ということだ。一般的にインターネットのビジネスというと、「アフィリエイト」や「Googleアドセンス」といったものを思い浮かべる人が多いと思うが、この本にはそれらよりももっと根深い、ITビジネスの根幹に関わることについて述べられている。

ここにその一部を引用してみよう。

ビジネスの原理は、「その商品を安いと感じるところから仕入れて、高く感じているところへ売る」ことにある。(P19)

インターネットが出現してからは、これが「世界中に散在しているユーザを一箇所に集めて、そのユーザを金を出しても欲しいと思っている企業や人と結びつける、マッチングする」ことになった。(P33)

分かりやすい丁寧な具体例とともに説明された筆者の論は明解で筋が通っている。

それと同時に、この論は「これからのビジネスはどうあるべきか」ということについても示唆しているようにも思える。

たとえば、利益をあげるための方法として、一般的に利用されている「人気商品」を一通りあつめて販売するという方法。この方法はたしかに商品が売れる方法には違いないが、安く仕入れることが難しいうえに、それを高く売ることも難しい。

筆者の言うとおり、その商品に価値がないと思っている人から安く仕入れて、その商品に価値がある人に高く売るというのが最善の方法だろう。

そして、ここから見えてくるのは、狭い日本だけを視野に入れてビジネスをする時代は終わったということだ。なぜなら、「価値」とは遠く離れていればいるほどギャップが生じやすくなるものだからだ。

日本ではほとんど価値のないものでも、海外のある国では非常に高い価値のものであるかもしれない。もちろんその逆もあることだろう。

そうすると、問題はその情報をいかに集めるか、そしていかにそれをビジネスとして成立させていくべきなのかということになる。

Googleの検索エンジンはたしかに優れているが、残念ながら何がどこで価値あるものなのかを簡単には教えてはくれない。その情報を仕入れるためには、Googleには真似できない方法でユーザを獲得することが必要なのだ。

そういう意味ではITの世界にはまだまだ巨額のビジネスチャンスが眠っていると言えるだろう。

そしてそのチャンスをものにできるかどうかは、今までにない斬新な方法でユーザを獲得できるかにかかっていると言える。

新しいITビジネスの勝者は、いつの日か私たちが想像すらしないところからそれを獲得することだろう。